江田浩之「夕照」
奥様が送って下さった、江田浩之(こうだ・ひろゆき)氏の遺歌集、「夕照(せきしょう)」を読みおえる。
2012年1月、柊書房・刊。
彼が「コスモス」の先輩である外、僕と大きな関わりはない。
歌集「風鶏」に続く、第2歌集でもある。
人工透析を受けながら、教師を定年まで勤め上げ、その後に数回の大手術を受けながら、短歌への意欲を絶やさなかった人生である。
1ページ4首、総223ページはやや重い印象だが、載せたい歌が多く、ページも歌集の体裁をはみださないようにとすれば、こうなるのだろう。
短歌を抄出しようとして、付箋を貼りながら歌集を読むのは、良い事だ。作品を見きわめ、見落としの無いように読んでゆくから。
以下に8首を引く。
ワイパーが雨を拭き消すその幅に波のめくるる冬の海原
追憶の母となりたり風中に麦を踏みつつ遠ざかりゆく
取り入れし洗濯物に向かひゐる妻は妻とふ時間をたたむ
水の面に散りし紅葉に口をつけ鯉が押しゆく遊びのごとく
娘が帰り妻が帰りて病室にひとりの時間日暮れてゆけり
目覚むればまだやりなほしできさうな朝がきてをり雀鳴きゐる
利かぬ脚曳きつつすすむ蹌踉と最期にちかづく形かこれは
むらさきの烟なす藤見上げつつもうしばらくは生を楽しまん
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