及川貞「野道」
角川書店「増補 現代俳句大系」第4巻(昭和56年・刊)より、10番めの句集、及川貞(おいかわ・てい)「野道」を読みおえる。
原著は、昭和16年、甲鳥書林・刊。
水原秋櫻子の序文、313句、後記を収める。
平凡な主婦の日常を句にして、当時は異彩を放った、とされる。
彼女はその後、戦争により自分の子、1男2女をすべて失い、海軍軍人であった夫にも何らかの事はあっただろう。それらすべてを、彼女は句を吟ずる事で、乗り越えたようだ。
以下に5句を引く。
桔梗や湖上に雨は降りいでぬ
室咲と並びて縁にものを縫ふ
盆支度して古町のひそとあり
梅雨ふかし蔓まきそめし朝顔に
三つ星の上に月ある寒さかな
コメント