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2012年3月20日 (火)

藤原定「環」

 沖積舎「藤原定全詩集」(1992年・刊、限定500部)より、5番めの詩集「環」を読みおえる。

 この3月9日に、詩集「吸景」を紹介して以来である。

 のびやかな比喩の作品が多い。

そんなふうに死というものも

生の変容流転にすぎないのだ

    「甲斐駒のうしろから」より

 上記のように輪廻や、あの世を信じられれば、老期も生きやすいのだが。

 短い詩を1編、まるごと紹介する。

 

  山にしたって

     藤原定


山にしたって沈黙しているのではない

だが発音できるのは二つ三つの母音ばかり

しかもオクターヴがあまりに低いので

ぼくらの耳にはききとれないが

草木はみなそれを全身できいているし

青空は見ひらいた眼でききとっている

鳥は翼をのばしきったまま

母音ばかりのフーガ旋律の上を

閑にまかせて波のりしている

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