岩田亨「夜の林檎」
角川書店、平成17年・刊。尾崎左永子の帯文。
彼は「運河の会」「星座の会」所属。
神奈川県在住、学習塾・自営。
歌集は1ページ2首で、余裕がある。
エッセイ2編を付す。
初めはゆるめな印象の作品もあるが、のちに歌が締まってくると、なんだか寂しい気持ちもする。
以下に7首を引く。
応援のわれの姿を一目(ひとめ)見て走る時の間 児(こ)は追い越さる
デジタルの時計に変えたこの朝は出勤までの手順間違う
落武者の影曳(ひ)くごとき男らがひしめき合えり 終バスの中
網を引く声の消えたる夕暮れに波立ち上がる九十九里浜
コロイドの溶液満てるガラス器に太陽光の反射が眩(まぶ)し
跳躍のかたちを空に残しては敗者は順にフィールドを去る
つややかに光るトマトが食膳にあるを惜しみて最後に食す
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