永井陽子「なよたけ拾遺」
青幻舎「永井陽子全歌集」(2005年・刊)より、2番めの「なよたけ拾遺」を読みおえる。
原著は、1978年、短歌人会・刊。第4回・現代歌人集会賞・受賞。
題名は、劇団「四季」の「なよたけ」の舞台を観て、触発された為と言われる。
短歌343首、短い物語4編、評論「式子内親王――その百首歌の世界」を収めるが、僕は短歌をのみ読み、物語の短歌以外の文、評論は読まなかった。
私性を越えること、古典和歌へのまねびなど、無理をしていると感じられる事がある。ただし、のちの歌集を拾い読むとなめらかな流れになっているようで、読むことが楽しみである。
以下に7首を引く。
かぜのやうに大きなつばさ来てとまるこのたそがれの山野にねむれ
月光にもえたつ石の世界より汝れは来たりき掌のないままに
ひとつびとつうちくだかれて生くる背をいざなふやうに天のゆふやみ
火の風土かぜの風土をかたり継ぐこころに生きてはるかなる空
かごめかごめうるしもみぢの輪の底ひちひさき鬼は眸を閉ぢてゐる
春の夜に逢へば鳴る骨それよりもなほとほくちちははの骨鳴る
そらの喪へひそかにふくす麦秋のこころの底を流れゆく耳
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