永井陽子「てまり唄」
青幻舎「永井陽子全歌集」(2005年・刊)より、5番めの「てまり唄」を読みおえる。
原著は、1995年、砂子屋書房・刊。
創作期間(1987~1993)は、前歌集「モーツァルトの電話帳」と重なりながら、二年を越して出版された。
私性の強い作品と著者自らが「あとがき」で書く、これらの歌を僕は好きである。写実とか境涯詠を勧める訳ではないけれども。
以下に6首を引く。
つくねんと日暮れの部屋に座りをり過去世のひとのごとき母親
猫たちにひたことみこともの言うて門を出でゆく影法師老ゆ
その肩にわが影法師触るるまで歩み寄りふとためらひ止みぬ
母とふたり生きてほとほと疲れたれば海のやうなる曇日が好き
人間はぼろぼろになり死にゆくと夜ふけておもふ母のかたへに
とむらひの日は過ぎやがて腐りゆくマスクメロンやたまごや南瓜
ダウウンロード・フォト集より。
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