三國玲子「空を指す枝」
短歌新聞社、2005年・刊。
7歌集、略年譜、初句索引、等を収める。
写真は、箱の表。かつての僕の保存が悪く、くすんでいる。
他の全歌集より先に読み始めたのは、三國玲子(1924~1987)が、63歳で自死という悲劇的な最期を遂げたからだろうか。
彼女は戦後より、アララギ系の「潮汐」(鹿児島寿蔵・主宰)で活動してきた。その廃刊後は「求青」の編集人となった。
第1歌集「空を指す枝」(1954年、白玉書房・刊)は、出版が前衛派の最盛期の頃であったため、対比的意味合いからアララギ写実系出の新人として迎えられた、とある。
若さの過ぎゆく時期の動揺と自負を詠って、当時の女性に受け入れられたのだろう。
以下に6首を引く。
うづくまるわが片頬に光さし自負の心のたかまらむとす
誤解され易きわが性を折ふしに庇ひくれし友も遠く嫁(ゆ)きたり
芸術家の父もつ故のかなしみも誇も知りぬ幼き日より
なほ長く若き月日のある如く髪を短く切りて貰ひぬ
ささくれし唇乾き目覚むれば薫らぬ花のごとく侘しき
残雪の斜面を照らす夕映えに地下よりいづる車内あかるむ
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