三國玲子「蓮歩」
短歌新聞社「三國玲子全歌集」(平成17年・再版)より、4番めの歌集「蓮歩」を読みおえる。
原著は、昭和53年、角川書店・刊。461首。
46歳~54歳頃の作品と思われる。
家庭は平穏(子供には恵まれなかったが)、仕事は出版社の書籍編集と、充実した時期の作品である。もっとも、歌集発行年7月には、会社を退職している。
この頃より、短歌欄選者、短歌通信添削、短歌会講師、などの担当が多くなってゆく。
以下に6首を引く。
労働の酬いさびしと歩廊より仰ぐ堤はれんげうの季
蔭の力むくはれたりとパーティのいよよ華やぐときに罷りきぬ
久しかる自立の希ひ遂げたりと思ひしときに老は迫りぬ
行きてまた孤立せむとすれんげうの黄のたなびきは朝光のなか
遊ぶこと拙きわれは重き扉をひらきて夜の潮の香を浴ぶ
卯月早や熱き舗道にいでて来つ本編む仕事けふはもの憂く
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