谷川俊太郎「空の青さをみつめていると」
谷川俊太郎の選詩集「空の青さをみつめていると」を読みおえる。
角川文庫、平成6年18版。
この本は、2冊による彼の自選詩集の1冊めであり、2冊めは「朝のかたち」と題される。
僕は思潮社の「谷川俊太郎詩集」「続 谷川俊太郎詩集」「詩集」を、以前に読んだから、ここに収められている詩は、既に読んでいる筈である。
しかし印象深い詩をのぞき、僕の記憶に残っていなかった。
今回、感銘深かった詩は、「鳥羽」と題される連作11編(これで全部らしい)である。「何ひとつ書く事はない」(「鳥羽 1」)、「私にも刹那をおのがものにするだけの才覚はある」(「鳥羽 2」)と正直に(?)書いている。
さらに「鳥羽 3」では、「飢えながら生きてきた人よ/私を拷問するがいい(1行空き)私はいつも満腹して生きてきて/今もげつぷしている」と書いて、中産階級の詩による代弁者である事を宣言している。
この事で彼を責めようとは思わない。しかし受け入れやすそうな口調の陰で、悲劇は起きている。
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