春日井建「青葦」
砂子屋書房「春日井建全歌集」(2010年・刊)より、4番めの「青葦」を読みおえる。
原著は、1984年、書肆 風の薔薇・刊。
1963年・25歳で歌と別れた彼が、1979年・41歳で歌作・再開、中部短歌「短歌」の編集発行人を引き継ぐ。
歌作・再開は、三島由紀夫の死(1970年)、大事な友の死があり、父の死が「充填された銃の引金をひかせることとなった」(「あとがき」より)。
結社誌の編集発行人を引き継いだのは、父の遺志か、残された会員の意志か、彼の老母への憐みか。「この短い期間の心理的事件は、私にとっては不可思議かつ不条理だったが、表向きには自然にことが運んだ。」と彼も多く触れられたくないような、「あとがき」である。
以下に5首を引く。
蕩尽のはてに帰りし体には馴染まむとせぬ家具の影さへ
秋雷の一閃ののち闇ふかし忘じ難きは人にはあらず
うちつけに黄葉吹きあぐるつむじ風われに老いたる母一人ある
運不運ともに搬ばれゆくならむ旅の鞄はわれになじみぬ
住む場所のいづこにもなき悲しみに砂漠清しと言ひしロレンス
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