石原吉郎「サンチョ・パンサの帰郷」
花神社「石原吉郎全詩集」(1976年・刊)より、第1詩集「サンチョ・パンサの帰郷」を読みおえる。
石原吉郎(いしはら・よしろう、1915~1977)は、1938年(23歳)受洗、1939年・入隊、1945年・ソ連抑留、のちにシベリア重労働、1953年・日本帰還。
1964年、この詩集「サンチョ・パンサの帰郷」により、第14回H氏賞・受賞。
彼はのちの文章「沈黙するための言葉」で(付録「手帖」の、谷川俊太郎の文章より、孫引き)、「詩を書くことによって、終局的にかくしぬこうとするもの、それが本当は詩にとって一番大事なものではないか」と書いている。
のちの詩の事は措いて、彼は間違っていたと思う。1つは、彼がクリスチャンであった事。宗教は、世界最大のマヤカシである。
2つは、1991年のソ連崩壊を知らずに亡くなった事。ソ連は、74年間の悪夢であった。
彼が伝達を志向しない詩を書いた事は、これまでの抒情・叙事や、戦後の暗喩を重ねた詩でも、表現できない経験があったため、とはわかる。しかし現在の、訳のわからない詩へ端緒をひらいたようで(それ程の経験もない人の)、僕は受け入れがたい。
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