春日井建「朝の水」
砂子屋書房「春日井建全歌集」(2010年・刊)より、最後の第9歌集、「朝の水」を読みおえる。
原著は、2004年、短歌研究社・刊。411首。
2004年5月15日に歌集発行、その1週間後の5月22日、中咽頭癌により65歳で逝いた。
この歌集では、闘病の中で、食事やスポーツ観戦など、生を惜しんだ。
華々しい青年時代の出発、歌の別れ、けじめをつけての歌壇復帰、自己の作品の発展と共に、短歌結社を営んだ。
61歳で癌が発見され、65歳で惜しまれてなくなった。
彼の性的偏向、一時的な短歌との別離がありながら、品格を保って歌人の生を徹した事は、称賛されるべきである。
以下に7首を引く。
細幹よりさらなる細枝葉ごもりに紋白のやうな花とびかひつ
先発メンバー表にまづ見る三都主(サントス)の風切羽もつ脚をよろこぶ
一刻の長さ一日の短さを体感しつつ湯浴みしてゐる
帰らざる時知らしめて庭隅の白まんじゆしやげ咲き足りて消ゆ
流動食といへども喉に障る日は茶をのみて足る日向の椅子に
文鳥はひとりし遊びわれは書く性格の応(かな)ふ生きものを得つ
神託はつひに降(くだ)れり 日に三たび麻薬をのみて痛みを払へ
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