中山礼治「黄蜀葵」
「コスモス」の先達歌人、中山礼治氏の第2歌集「黄蜀葵」を読みおえる。
伊麻書房、1978年・刊。603首。
箱、宮柊二・題簽、本体にパラフィン紙カバー。
黄蜀葵(オウショッキ)とは、とろろあおい(1年草)で、和紙の糊料、漢方薬に用いる。
中山礼治氏(1912~1998)は、中学校卒業後に一旦就職するが、23歳で国学院大学師範部に入学、教職の道を歩んだ。
師範部の頃に「多磨」入会、1953年の「コスモス」創刊に参加。
「自己を誠実に詠んだ」(三省堂「現代短歌大事典」より)とされる。
以下に7首を引く。
午後着ける上州仁田の葱の泥雪降る日ゆゑ少し濡れたり
義仲寺の墓立ちめぐる生垣のかの山茶花や咲きつつあらむ
山腹にそよりともせぬ葛の葉に暑き時間はすでに来てをり
散りそめて萼の赤みの目にしるし山木にまぎれ行かむ桜は
邪魔として薊四五本を切り払ひ日暮れの妻が生き生きとをり
根元より掘りしすすきの株跡に今朝つくばふはぬくもる鳩か
いつのまかとろろあふひのつぼみたる夕べの庭におどろきて佇つ
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