小島和子「雪ふる音」
昭和50年8月、柏葉書院・刊。
箱、本体にビニールカバー、口絵1枚、宮柊二氏・題簽。
昭和32年~48年に、「コスモス」へ発表した作品より、田谷鋭氏・選の367首を収める。
彼女は「コスモス短歌会」F支部の草分けらしく、実弟の現・支部長よりエピソードを伺う事がある。
彼女は医師と結婚しひとり息子を得るが、彼女25歳の時に夫が結核で逝き、彼女は教壇に復帰、しかも彼女も結核と闘病する事態となった。
彼女のひとり息子が婚約して、親の責任の大半を終えたと感じ、歌集出版の運びとなった。
僕がF支部歌会に参加した平成6年には、もういらっしゃらなかった(昭和56年に亡くなられた)。
以下に7首を引く。
費えせぬ一日なりしを喜べる心もあはれひとり夕餉す
レモン削ぐ手許を友の褒めくれき長き独りに馴れてわがする
わが編みし黄のネクタイを翻し樟の木下を夫かへり来ぬ
来む世にもをみなと生れ添ひたしと言ふに臨終(いまは)の夫頷きし
手放しに歔(な)くも覚えつ床に嗅ぐコテイ香水は亡夫がくれし
部屋隅に吹き寄せられし花びらも吸はせつつ押す掃除機重し
古毛糸編みつつテレビ見るわれの独り笑ひてやがて寂しき
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