川辺古一「駅家」
川辺古一(かわべ・こいち、1926~)氏の第3歌集、「駅家(えきや)」を読みおえる。
1977年、伊麻書房・刊。
宮柊二・題簽、箱、本体にパラフィン紙カバー。
1966年(40歳)~1974年(48歳)の作品より、724首を収める。
氏は、1945年「多磨」入会、1953年「コスモス」創刊に参加。宮柊二への敬愛が篤かった。
自然を詠んだ歌が多いが、その中に自己・他者を押し出して、純粋な自然詠にならない。例えば「素枯れたる林の中に頸伸ばし雉一羽いまわが方を見る」のように。
以下に6首を引く。
これ以上乾く筈なき枯草に風音こもる昼間を歩む
山上の墓前に妻が供へたる牛乳壜に夕陽は当る
いきいきとわれを見給ふ神護寺の虚空菩薩の腕太しも
自動車の風圧の音いさぎよし校正終へて帰る夜道に
汗ひきてゆくを待ちつつ立ちをれば山畑の紫蘇焼く匂ひする
会議故今日も遅しと告げしとき妻よりも子は寂しき顔す
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