浅野美紀「嫩葉」
2007年、砂子屋書房・刊。
彼女は「未来」会員。
歌集は、近藤芳美氏への挽歌、「沙羅の花」1連16首より始まる。
子供が幼い時代から、下宿して家を出る頃まで、妻・母の立場に安住できない心情を歌に仕立ててきたようだ。
また短歌に写実ではなく、芸術性を求めているようで、詩性を強く感じさせる作品が多い。
以下に7首を引く。
青い薔薇誰に向かって咲いている初雪の便り届く日暮れに
再会の切なき夜に薄墨の桜散りゆく帰れなき時
雨の前の重き空気をまといつつ夕暮れに煮る無花果のジャム
茸飯炊きあがるころ夕映えて枯れ芝に子はボールを蹴りぬ
桃の香の流るる部屋に長く居る無口な子との満月の夜
柿の葉の玉虫色に輝くを君と見ており冬のはじめに
ついさっき魚をさばいた指先で君のメールに返信をせり
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