鈴江幸太郎「白夜」
初音書房「鈴江幸太郎全歌集」(昭和56年・刊)より、3番めの歌集「白夜」を読みおえる。
原著は、昭和24年、高槻発行所・刊、594首。
鈴江幸太郎(1900~1981)が、のちの昭和28年に創刊・主宰した歌誌「林泉」の今がわからなくて、三省堂「現代短歌大事典」(2004年・刊)や角川「短歌年鑑2005年版」を調べても、載っていない。
しかしYahoo!で検索すると、「林泉短歌会」のホームページ(←リンクしてある)があり、月刊誌の発行など、活発に活動している。指導者の1部が、「新アララギ」の指導者と重なり、「新アララギ」系の地方誌と見て良いようだ。
「白夜」では、敗戦前後の困難な時期の、喜憂が詠まれている。
以下に6首を引く。
うちひびく川瀬の音にゆらゆらと螢火くだりその影も映ゆ
焼けあとのここにしろじろと浄き灰書物(しよもつ)の灰にわれはかがみぬ
清きもの戀ふるおもひに出でて來つ雪の散りくる川面(かはも)に飽かず
焼けしもの我の言はねば妻子らも我のまへにはいはぬにやあらむ
樹々のなか出でて明るきひろ池の丘の日向(ひなた)に山吹さきぬ
草のごと小さき檜苗(ひなへ)がかぎりなく吹かれてゐたりうす紅(くれなゐ)に
季節に合わせて。
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