鈴江幸太郎「雅歌」
初音書房「鈴江幸太郎全歌集」(1981年・刊)より、5番めの歌集、「雅歌」を読みおえる。
今月9日の記事(←リンクしてあり)で紹介した、「柘榴の家」に継ぐ歌集である。
原著は、1953年、林泉短歌会・刊。446首。
1951年(52歳)~1953年(54歳)の作品を収める。この時期、作者には大きな事柄が多くあったようだ。
まず長女(亡くなった先妻との娘)の結婚。
「アララギ」の先輩、岡麓と斎藤茂吉の逝去。
そして自身が主宰する歌誌「林泉」の創刊。
住友電工(株)社史編纂の仕事を続けながら、短歌に励んだといえる。
以下に6首を引く。
くらき工場に灼(や)けし鋼塊の辷りゆき人は潛(ひそ)めるごとく立ちたり
起きいでてみ寺の山の草踏めば那智の山みゆ白瀧も見ゆ
たちまちに嫁ぐ日ちかくなる汝に言ひたきひとつまだ言はぬかも
くれなゐの濃染(こぞめ)の牡丹散りかかる時にしあひぬ君の忌に来て
傍らに來りて小さき者が臥す赤チンキ附けし小さきその指
わが知らぬわが力涌き出づるべし我に寄りくる若き友らのこゑ
(「林泉」創刊)
暑い日々に、1枚の涼を。
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