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2013年5月 2日 (木)

狩野一男「悲しい滝」

Cimg6935 楽天ブックスの「ネオウィング」に注文していた、狩野一男・歌集「悲しい滝」が届き、先日に読みおえた。

 2012年、本阿弥書店・刊。

 4冊めの歌集、帯。385首。

 氏がクモ膜下出血を起こし、4度の脳外科手術を受けて、立ち直るさまと、岩手・宮城内陸地震、東日本大震災により罹災した氏夫妻の故里への愛情が、歌の源となっている。

 現実を見つめて詠い、おのずと悲痛とユーモアを醸す作品がある。

 以下に8首を引く。

退院後三百余日、再発を警戒しつつさくらに見(まみ)

クモ膜下出血を経てウツ病をわけもわからず直(ひた)走るかな

はつあきの夜の不覚の涙かな毛利ひいなの死をくやしみて

前頭葉、側頭葉にひびくかな春のいろんな風景の音

ありて無きごとき故郷となるなかれ妻の釜石われの栗原

惨状を目の当たりにし諦めがつきたるらしも泣きつつ妻は

古い深いうつくしいはた新しいやさしい強いわが東北は

いろんなるあの日の果ての今日にして思へば遠く来たり 老いたり


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