狩野一男「悲しい滝」
楽天ブックスの「ネオウィング」に注文していた、狩野一男・歌集「悲しい滝」が届き、先日に読みおえた。
2012年、本阿弥書店・刊。
4冊めの歌集、帯。385首。
氏がクモ膜下出血を起こし、4度の脳外科手術を受けて、立ち直るさまと、岩手・宮城内陸地震、東日本大震災により罹災した氏夫妻の故里への愛情が、歌の源となっている。
現実を見つめて詠い、おのずと悲痛とユーモアを醸す作品がある。
以下に8首を引く。
退院後三百余日、再発を警戒しつつさくらに見(まみ)ゆ
クモ膜下出血を経てウツ病をわけもわからず直(ひた)走るかな
はつあきの夜の不覚の涙かな毛利ひいなの死をくやしみて
前頭葉、側頭葉にひびくかな春のいろんな風景の音
ありて無きごとき故郷となるなかれ妻の釜石われの栗原
惨状を目の当たりにし諦めがつきたるらしも泣きつつ妻は
古い深いうつくしいはた新しいやさしい強いわが東北は
いろんなるあの日の果ての今日にして思へば遠く来たり 老いたり
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