鈴江幸太郎「屋上泉」
初音書房「鈴江幸太郎全歌集」(1981年・刊)より、6冊めの歌集「屋上泉」を読みおえる。
原著は、1956年、林泉短歌会・刊。
463首、「巻末記」を収める。
先の5月21日の記事(←リンクしてある)、「雅歌」に続く歌集である。
住友家先代家長(当時)伝記「住友春翠」の執筆・完成、また主宰する「林泉」の吟行、歌会など、繁忙でありながら充実していたらしい、約3年間の作品である。
以下に7首を引く。
この白き石の佛のにほふ面(おもわ)あくがれ立つは人に障(さや)らず
勞はれと言ひ給ひしといふことも人傳なれば寂しきものを
苦しみの集る如き七月の曇りに左千夫先生死にき
花すぎて花莖垂れし擬寶珠(ぎぼうしゆ)の下より涌ける水にまた對く
破れたるソファーにふかく身を沈む立ちあがる氣力殘れりや否(いな)
朝に寄りゆふべに跼みかなしめば幼き合歡の芽は葉となりつ
青空のした架線ありて電流の鳴れるは雨の音よりわびし
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