鈴江幸太郎「山懐」
初音書房「鈴江幸太郎全歌集」(1981年・刊)より、9番めの歌集、「山懐」を読みおえる。
今月14日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「水の上」に継ぐ歌集である。
原著は、1966年、初音書房・刊。491首に後記を付す。
著者64歳~66歳の作品であり、伝記「小倉正恆」執筆刊行の他は、短歌に関わる事が多かったようである。
末尾に近い連作「奥羽四日」は106首の力作である。
以下に7首を引く。
歡びて歎きてはやく一生(ひとよ)過ぐ岩をかくして若葉茂りぬ
生きあぐむその折々を寄らしめし合歡(ねむ)も柘榴(ざくろ)も衰へむとす
獨り言(ごと)おほくなりたる言ひ合ひて谷くだる君も我も老いたり
木に草に足をとどめて心足(た)る坂の上(のぼ)りもどこまでとなく
安らかに妻の寢息の定まればこころ落著くいつごろよりか
人のため計り努めて仆れしをただ見守りて過ぎし年月(としつき)
君の跡老いて巡らむと思ひきや世に怖れつつも生きをれば來つ
季節は合っているだろうか。
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