プーシキン「スペードの女王 ベールキン物語」
プーシキンの小説集、「スペードの女王 ベールキン物語」を読みおえる。岩波文庫、1993年32刷。
神西清が昭和初期に翻訳したものを、新仮名、新漢字に改めた訳文は、興趣の深いものである。
「スペードの女王」は、カード賭博を巡る怪奇物語である。筋は戒めているように見せるが、賭博の狂気をよく表わしていると、僕は思う。
「ベールキン物語」は、5編よりなる連作短編集で、故人等の原稿に序文を付けて発表する、という体裁は古今東西を問わぬ形式である。
旧・ロシアの階級を問わぬ人情が描かれて、僕の好みの物語である。最後の「贋百姓娘」は、「ロミオとジュリエット」のように、対立する2家の娘息子の恋物語だが、喜劇的な展開の果て、ハッピーエンドに至る、微笑ましいストーリーである。
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