岸風三楼「往来」
角川書店「増補 現代俳句大系」第7巻(1981年・刊)より、10番めの句集、岸風三楼(きし・ふうさんろう、1910~1982)の「往来」を読みおえる。
この巻では、先の9月26日の記事(←リンクしてある)にアップした、八木絵馬「月暈」に継ぐ句集である。
原著は、1949年、高山書院・刊。722句。
富安風生の長い長い序文は、1時の虚子に倣ったものであろうが、見苦しい。
また敗戦日の3句が載るが、嘆きも喜びもなく、「万象すぐる」と吟じて、人事ではないかのようである。
またメーデーの1闘士、われら労働者、と吟じるが、大衆より恵まれていた事は明らかで、庶民ぶる事はない。生活では誠実だったようだけれども。
以下に5句を引く。
傷兵と子に噴泉の水は涸れ
巫女も持つ時代祭の長刀を
凍つる夜のラジオは軍歌もて了る
午すぎてよりの暑さの法師蟬 (昭和20年8月15日)
煮凝や子なき夫婦の相頼り
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