十鳥敏夫「游方」
十鳥敏夫(じゅうとり・としお)さんの、「青宇」に続く第5歌集「游方(いふはう)」を読みおえる。
2009年、本阿弥書店・刊。462首。
著者は、前登志夫に師事。「ヤママユ」同人、詩誌「湖」同人。
前登志夫の師系の前川佐美雄(「日本歌人」創刊)の系の歌人(塚本邦雄、山中智恵子、等)は、僕はなじみにくい。
十鳥さんの場合、己の愚を押し出している所があるが、僕は僕の出来得る限り、理性的でありたいと願っている。
戦後教育の恩恵を受けたと考える者の、1立場である。
以下に7首を引く。
竹林の奥より颯々あゆみくる死にてだんだんに大きくなる人
元日のひさしに降りる雀どち降りそこねし一羽たたらを踏めり
戦争をからだの芯から知る人も老いさらばへてさくら咲きいづ
朝夕をファミリー単位に並びたりつばめは電線が何よりも好き
苦も楽もきれいさつぱりほとけへと近づくいのちつぶさに目守(まも)る
朝星、夜星はたらきづめの母者びとこんなわづかな骨になりたまふ
ひと日づつ身にし溜まれるつみとがはごみの袋に容れて出すべし
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