結城文「光る手」
2003年、砂子屋書房・刊。
彼女は「未来」他・所属。
もう余り力まなくても良いのではないか。夫を見送り、子供たちを巣立たせて、女性の一人暮しには、困難もあるだろうが。
また短歌では、比喩などのレトリックを多用して、芸術性を高めようとしなくても、良いのではないか。芸術性を求めるなら、詩を書けば良い。
短歌は個人の真実を表現して、救われてあれば良い。また救われるからといって、歌人もあまり無理をしてはいけない。
お説教めいた事を書ける立場ではないが。
以下に7首を引く。
海に向くベランダに椅子持ち出して遠き自分を見つめてゐたり
うつしみを抜け出しものか逃げ水の光となりてわれを呼ぶなり
歳末のスクランブル交差点 時代頒ちていとしき人人
炎昼の花びらうすき立葵わがトルソーを支ふ手あれな
切り捨てて君は歩めた 葉がくれにかろく鳴りゐる空蟬の殻
君といふ存在遠きかなしみに昨日と違ふ月の昇りぬ
子といへどここは私のサンクチュアリ汝(な)がスニーカー踏み入るなかれ
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