斎藤史「うたのゆくへ」
大和書房「斎藤史全歌集」(1998年5刷)より、歌集「うたのゆくへ」を読みおえる。
10月18日の記事(←リンクしてある)、歌文集「やまぐに」に継ぐ。
原著は、1953年、長谷川書房・刊。1948年~1952年の、551首を収める。
「やまぐに」の作品が、1946年のものなので、1947年分としてこの歌集の前に「対岸」13首が収められる。
斎藤史は、1949年に林檎倉庫より、長野市内の病院長社宅に移り(夫が医師のせいか)、父母を呼び寄せている。
人に雇われ働く事がなくなると、途端にお嬢様風に戻ったと読むのは、僕の僻目だろうか。
写実風でなくなると言うより、大幅な字余りの歌があったり、心情を比喩に流した作品がある、と見る。もっともこの後も、斎藤史に苦労はあったようだが。
以下に5首を引く。
零下十六度足袋はかぬ子がつま立ちてたたみを歩くあかきそのあし
人も事もすでに多くは終れりと思ふこころにひき入れらるな
しづかなる黄のうつろひや六月の茜はながく余光をたもつ
傷ふかきものは叫ばずあたたかき灯(ひ)がつけばまたかなしきならむ
桃色のかかとを持てば若き日はたのしきならむ踊りて飽(う)まず
(注・1部、旧漢字を新漢字に替えた所があります)。
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