前登志夫「青童子」
ある人より譲られた歌集、前登志夫「青童子」(1997年、短歌研究社・刊)を読みおえる。
彼の歌集は、2007年9月19日の記事(←リンクしてある)、国文社の「前登志夫歌集」(現代歌人文庫・8)を、読んだのみだった。
前登志夫(1926年~2008年)は、1964年に第1歌集「子午線の繭」を刊行、1980年に歌誌「ヤママユ」創刊。
2013年に、全11歌集・他を収めた全歌集が、短歌研究社より刊行された。
「青童子」では、風狂の度を増しているようだ。何に苦しんだ果てだろう。
また性に関わる歌もあるが、老いの妄執だろう。
以下に6首を引く。
雪やみし山の夜空に含羞の星よみがへる静けさにゐつ
播かざりし穀物の種子朽ちはつるこの地下倉に差す雪あかり
みちのくの人ら黙して物食むを目守りゐたればわれは旅人
栃の実を拾へる童子を見張りをるけもののけはひ、紺青の時間(とき)
物売れる人らよろしも扶余の街の市場の露地にうづくまるわれ
さくら咲くゆふべの空のみづいろのくらくなるまで人をおもへり
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