近藤芳美「吾ら兵なりし日に」
岩波書店「近藤芳美集」第1巻(2000年・刊)より、「吾ら兵なりし日に」を読みおえる。
今月4日の記事(←リンクしてある)で紹介した、第1歌集「早春歌」に継ぐ。
1975年、短歌新聞社・刊。
経緯は、歌集の「あとがき」、第1巻の「あとがき」で述べられている。
従軍中、月2枚許された葉書に戦場詠を書いて妻に送り、それを妻の弟が清書した。1959年、そのノートを発見し、1部に手を加え120首ほどを「短歌研究」に発表。更に50余首を加えて出版した。
半無意識の取捨、改訂はあるだろうが、1戦場詠である。
以下に6首を引く。
いづくにて吾は死すならむと思ふにもああ遠き日の如き感情
次々に鼠のごとく吊られつつ軍馬は嘶(な)けり川波の上
病衣を武装に換へて来し兵の将棋幾番かさして発ち行く
病む妻を心に抱けりいつからか煙草止めゐし白き吾が指
病兵と煙草を換ふることを知り鉄条網にすがる女ら
戦線の日を想ふとき出づる涙あはれ贖罪のあとの思ひに
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