近藤芳美「アカンサス月光」
岩波書店「近藤芳美集」第3巻(2000年・刊)より、(戦時作品集「吾ら兵なりし日に」を挟み)第11歌集、「アカンサス月光」を読みおえる。
6月23日の記事(←リンクしてある)、「遠く夏めぐりて」に継ぐ。
原著は、1976年、短歌新聞社・刊。1972年~1975年の、602首を収める。
後退する学生運動(彼は、神奈川大学教授となった)、ベトナム戦争終結、詩人・金芝河の事件、外国のクーデター・反革命を詠む歌群の間に、叙景歌・相聞歌が鮮やかである。
以下に7首を引く。
思想と正義裁き裁かれてはてなき日ひとりの平安をまた怖れつつ
ガス栓をひらくと起きし夜の明けの野の雪明り妻は呟く
旗覆うひつぎに女の行くあゆみ殺戮に倦むときを重ねて
ありありと孤立する青春を見て過ぎむかく行き過ぎむ一教師ゆえ
脂肉吊りて小鳥を待つ庭にひかりは荒し朴の散る葉に
傍観し力の交替を目守るのみひと日の叫びキャンパスに湧く
共に苦しみ許さざりにし文学も伝うる晩年も死も時の渦
フリー素材サイト「Pixabay」より、アカンサスの1枚。
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