近藤芳美「樹々のしぐれ」
岩波書店「近藤芳美集」第3巻(2000年・刊)より、第12歌集「樹々のしぐれ」を紹介する。
7月21日の記事(←リンクしてある)、同「アカンサス月光」に継ぐ。
原著は、1981年、蒼土舎・刊。679首。
2度にわたり、ギリシア他の国を巡り、海外詠も多い。
彼の歌に、詰屈な印象がある。助詞の省略が多く、かつ字余りも多い。推敲を重ねたと読んだ事があるので、乱作ではない。政治、外国を詠もうとするからか。
以下に7首を引く。
暗緑の柱列の下石冷えてひびきは沈む歩むしばしを
窓ごとに烏賊干す白き壁の路地人はみなやさしき声かけて過ぐ
島の崖の道を伝うは騾馬の列沖に没り陽のはやひかりなく
外人ら荷に寄るロビーの佇みに遠く空染むる空港の灯は
風避けてモンマルトルにあるしばし記憶の坂もなべて冬曝(さ)れて
怒りとして言うべき今日を友らなき八月六日朝のかぎろい
生きて還りし病兵吾を置きて征(ゆ)く一夜の舟艇の音か聞こえて
コメント