田宮朋子「一滴の海」
本阿弥書店からの購入については、ここの今月22日の記事(←リンクしてある)、「歌集2冊」にアップした。
2015年9月・刊。523首。
田宮朋子さん(第48回角川短歌賞受賞、「コスモス」選者、他)は、宗教との関わり、短歌に打ち込んだ所から、心が強い。
そして海辺で育ったおおらかさもある。
彼女の優しさは、悲しみ事を経て、そういう所から現れるのだろう。
トリビアルな事から、3・11震災、母の死まで、レトリック豊かに詠んでいる。僕はかつての詩作の反動でか、詩歌のレトリックには否定的だったが、最近は認めるようになった。
以下に7首を引く。付箋はもっと一杯貼ったのだけれども。
冷えまさる河のぼりゆく鮭たちを駆りたててゐるエロス、タナトス
夢のなか呼んでゐるのは弟の声変りする前のこゑかも
ぐんわりと時が曲がるといふことあり二〇一一・三・一一
天空をゆく飛行機と葉にとまる蜻蛉いづれが精密ならむ
かんなづき五人姉妹の五女の母ひとり遺りて姉たちを恋ふ
亡き母に供へし桜の花つぼみ葬儀の朝に開ききりたり
坐りても立ちても眼つむりても胸の高さに海はひろがる
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