若山牧水「砂丘」
Kindle本「若山牧水大全」より、第8歌集「砂丘」を、タブレットで読みおえる。
今月21日の記事(←リンクしてある)、「秋風の歌」に継ぐ。
原著は、1915年(大正4年)、博信堂書房・刊。248首。
経済的にはともかく、精神的には(短歌上では)落ち着いた時期であったらしい。自序の末で牧水は「このままで今少し澄み入った作歌の三昧境に進みたいものである。」と述べている。
以下に7首を引く。
蜩なき杜鵑なき夕山の木がくれ行けばそよぐ葉もなし
尾長鳥その尾はながく羽根ちさく真白く昼をとべるなりけり
いしたたきちさきめうとの頬を寄せて啼くよ浅瀬の白石のうへに
飽かずしも酌めるものかなみじか夜を眠ることすらなほ惜みつつ
植物園のかれくさ原に居る鶫をりをり動き遠くとばなく
秋の夜のほのつめたさにいざなはれ友恋しさは火のごとく燃ゆ
ひそひそと山に分け入りおのづから高きに出でぬ悲しや春日
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