若山牧水「死か芸術か」
Kindle本「若山牧水大全」の全歌集編より、第5歌集「死か芸術か」をタブレットで読みおえる。
原著は、1912年(大正元年)、東雲堂書店・刊。388首。
先の10月24日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「路上」に継ぐ。
僕なら、「死か生か」「芸術か生活か」の対立項を考えるが、牧水は命懸けで芸術に向かうよりなかったのだろう。
砒素を秘め持ち、行くでもない帰るでもない漂泊の旅のうち、死ぬ気も失せたようだ。
以下に7首を引く。
蒼ざめし額つめたく濡れわたり月夜の夏の街を我が行く
秋の入日、猿が笑へばわれ笑ふ、となりの知らぬ人もわらへる
かなしくも我を忘れてよろこぶや見よ野分こそ樹に流れたれ
あをあをと海のかたへにうねる浪、岬の森をわが独り過ぐ
友よいざ袂わかたむあはれ見よ行かでやむべきこのさびしさか
帰らむと木かげ出づれば、となりの樹、かなしや藤の咲きさがりたる
曇り日やきらりきらりと櫓の光りわがをち方を漕ぎゆく小舟
コメント