近藤芳美「風のとよみ」
岩波書店「近藤芳美集」第4巻(2000年・刊)のしまいの、第17歌集「風のとよみ」を読みおえる。
今月8日の記事(←リンクしてある)、「営為」に継ぐ。
原著は、1992年、砂子屋書房・刊。455首。
中国、スペイイン、国内の旅の内の、昭和天皇の崩御に感慨があり、天安門事件を怖れ、東欧のビロード革命に自問する。
彼の詠いぶりが移りゆこうと、彼は狡猾ではなく、誠実であろうとした。
以下に7首を引く。
長き長き日を経るごとく過ぎゆくを一国の喪の冬の曇り垂る
猛だけと芽立ちまぎれぬ街路樹の闌(た)くる昼ながら紹興にあり
傷(いた)みとして知る中国というといえ電波に少女の叫び切れぎれ
菊に埋もるる黒布の柩小さきを君と思わむ呼びて別れ告ぐ
歓喜して「ベルリンの壁」今か越ゆる市民らの数何が推移す
見詰め合ういのちの果ての怖れなどいわざれば日は静けさに似む
ゆくりなき旅すがらなる町なりきゲルニカの過去を問う何もなく
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