若山牧水「くろ土」
Kindle本「若山牧水大全」より、第13歌集「くろ土」を、タブレットで読みおえる。
この前の「溪谷集」は、先の1月6日の記事(←リンクしてある)で紹介した。
「くろ土」は、1921年(大正10年)、新潮社・刊。999首を収める(牧水は千首だと、自序で書いている)。
自序で「『やれやれ今になつて漸く自分には歌といふものが解つて来たのかなア』といふ気持である。」と述べるごとく、後期の牧水の声価を定めた大歌集である。
以下に8首を引く。
わが屋根に俄かに降れる夜の雨の音のたぬしも寝ざめてをれば
筒鳥のこもりて啼くはいづかたの杉にかあらしこのおほき谷の
児等病めば昼はえ喰はず小夜更けてひそかには喰ふこの梨の実を
杉垣の下葉は枯れて秋の日のあきらかなるに雀あそべり
陸稲畑過ぎ来て此処におもはぬに会へる水田の稲のつめたさ
あたりみな光りひそまる冬山の落葉木がくれこの小鳥啼く
寒き日の浅間の山の黒けぶり垂りうづまきて山の背に這ふ
夜為事の部屋にうごける風ありてこの春の夜の雨はやみたり
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