近藤芳美「甲斐路・百首」
岩波書店「近藤芳美集」第5巻(2001年・刊)より、第20歌集、「甲斐路・百首」を読みおえる。
先の1月21日の記事(←リンクしてある)、「希求」に継ぐ。
1996年、山梨日日新聞社・刊。
歌誌「みぎわ」(1987年~、上野久雄・主宰)の創刊10周年記念号のため、上野久雄(1927年~2008年)に求められ、3回にわたって山梨県各地を吟行した成果である。自・まえがき、上野久雄・跋、吉田漱・解説を付す。
近藤芳美は、家庭や自然を詠っていたい、と洩らした事があるらしく、100首は爽やかであり、政治・社会を詠った詰屈はない。
以下に5首を引く。
くきやけきみどりに濡るるかまきりのいまだ幼き石塔の道
仙娥滝落つるたぎちの岩の面をさらに一すじ滝たばしれる
ようやくに桜は老樹春更くる清春芸術村甲斐駒を背に
久遠寺の春寂しらに今日を来ぬきわまるさくら道のいずくも
落葉松の樅と栂とに変るころときのま暗し登山路にして
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