近藤芳美「メタセコイアの庭」
岩波書店「近藤芳美集」第5巻(2001年・刊)より、第19歌集「メタセコイアの庭」を読みおえる。
先の第20歌集「甲斐路・百首」(歌集順が前後する)は、先の2月11日の記事(←リンクしてある)で紹介した。
原著は、1996年、砂子屋書房・刊。430首。
沖縄県を含む国内の旅、中国、イギリスへの旅の詠に、生活、思想を問う、詠が混じる。
苦しげな詠みぶりの歌もあって、当時の近藤芳美に詠う喜びがあったか、疑いが萌す。
以下に7首を引く。
暁光のひろがる後の眠りしばし覚めて窓より湖の冷え
その歴史のときどきを来て旅重ぬ北京は新樹のみどり湧くまでに
終りしはときの狂信若き戦死それより友ら無名の思想の死
日のかげると見るまで暗きはヒースの群れ羊を放つはるか高きに
一年を床乱し積む書のたぐいまとう焦燥に何を為残す
静かなる威圧に二重の柵の限る行き行きて復帰二十二年の後
初めより寡黙を思う集い過ぎひとりの街によろこびもなし
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