竹山広「地の世」
ながらみ書房「定本 竹山広全歌集」(2014年・刊)より、第10歌集「地の世」を読みおえる。
第9歌集「眠つてよいか」は、今月6日の記事(←リンクしてある)で紹介した。
「地の世」は、2010年、角川書店・刊。304首。
「地の世」は、2010年に90歳で亡くなった竹山広の遺歌集である。
前年、「現代短歌大賞」を受賞している。
「十字架上のおんくるしみの末端に加へたまへと祈りたり今日は」の1首があるごとく、善悪の意味で、敬虔なクリスチャンだった。歌にはあまり詠まなかったけれども。
このあと全歌集には、すべての歌集の解題、略年譜、初句索引、全歌集*目次細目、等を収めている。
以下に7首を引く。
臍を見て妻が戻しし南瓜はどなたの腹にをさまりたらん
介護3に格上げされて横たはる未明を走り去るオートバイ
のぼるかと見えし園児ら陸橋の下に並びて別れゆきたり
床上に飯を食はむと起きて座ることにさへわが妻にすがるを
図書館に並べられゐむわが本よ誇らしき顔を見せつつ並べ(注・蔵書一切を譲って)
妻としてありしこの世の歳月のくるしかりにしこころを語れ
歌人としてここまで至りえしことをわが生涯のよろこびとせよ
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