石川啄木「一握の砂・悲しき玩具」
石川啄木歌集「一握の砂・悲しき玩具」(新潮文庫、平成9年・刊)を読みおえる。写真の表紙は、おなじみだろう。
僕はこの本で、啄木の短歌をよく読みかえす。8冊本の全集を読み通した事もあるが、彼の良さをひと通り知るには、この文庫本で充分である。
啄木の短歌は、僕の短歌の原点、と言うより、僕の文学の原点である。
「一握の砂」の「忘れがたき人人」(二)より引く。
さりげなく言ひし言葉は
さりげなく君も聴きつらむ
それだけのこと
「それだけのこと」とは反語であって、彼は万感の思いをこめて、さりげなく告げたのである。
「悲しき玩具」より、巻末の1首を引く。
庭のそとを白き犬ゆけり。
ふりむきて、
犬を飼はむと妻にはかれる。
貧窮の中で彼もまた、小市民的生活に憧れたのだな、と感銘深いものがある。
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