狩野一男歌集「栗原」
狩野一男さんの第3歌集「栗原」(2008年10月、柊書房・刊)を読みおえる。
題名は、彼の故里の地名より採ったものである。現代詩作家・荒川洋治さんの詩集に「針原」という地名より採った1冊があった事を思い出す。
読了してまず思ったのは、彼はこんな、ざっくばらんな詠みかたをする人だったかな、ということである。もっと抒情的な詠みかたをする人だという観念があった。
以下に3首を引く。
べつに世を捨つるならねどみみちのくの奥のとほくへやがてかへらむ
このような思いを抱いて、大都会の生活に耐えている人が、少なくないだろう。ひらがなの多用が、ほのぼのとした郷愁を伝えている。
駅出でてただちに寒しさむければこころが弾みからだが躍る
彼が寒さの厳しい地の出身ということもあろうが、僕も夏は嫌い冬が好き(おもに仕事に関わる)なので、共感できる1首である。
でこぼこで毛の無きあたまかなしくて帽子をそつと目深にかぶる
大病をされたあとの、ユーモアというより、ペーソスのある1首だ。
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