俵万智「恋する伊勢物語」再読
ちくま文庫、2005年7刷。
昔に1度読んだ原文も、数年前に読んだ「恋する伊勢物語」も、内容はよく覚えていなかった。
俵万智の、おっとりした解釈は、好感がもてて、的を外してはいないようだ。
「無欲の勝利」と題して紹介されている第123段の話に惹かれる。情熱の冷めかけた男が、女に歌を詠んで贈る。
年を経て住みこし里を出でていなばいとど深草野とやなりなむ
女からの返歌は次のようだった。
野とならば鶉となりてなきをらむ狩にだにやは君は来ざらむ
俵万智も「痛々しいほどのけなげさ」とは評するが、「技術論で分析してみよう」と恋の駆け引きに論じ入って、情緒に深入りしない点が、残念である。
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