安岡章太郎の短編小説集「海辺の光景」を読みおえる。
新潮文庫、1970年6刷。
帯、パラフィン紙カバー、蔵印あり。
この本には、表題作の「海辺の光景」と、「宿題」「蛾」「雨」「秘密」「ジングルベル」「愛玩」の、7編の短編小説が収められている。
「海辺の光景」は名作である。海辺の精神病院で臨終近い母を看取る「信太郎」と父、戦後の困窮の中で狂気してゆく母の様子、が交互に描かれる。
男には多少はあれマザーコンプレックスがあるし、母の死に罪悪感をもつものだから、緊張した作品を描き得る。
「愛玩」が秀作で、他は習作に近い。
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