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2009年11月 8日 (日)

中田八重子「寒椿」

001  中田八重子さんの第1歌集、「寒椿」を読みおえる。

 2003年、風心社・刊。

 彼女は、埼玉県・在住、「未来」所属。

 親族の逝去、お孫さんの歌、海外旅行詠などの他、海外戦没兵士の慰霊の旅に出た夫に成り代わって詠んだ作品が異例だ。

 庶民の短歌作者にとって、歌集は「心情の人生史」だと思う。

 ある男性歌人が亡くなったあと、奥さんが創作ノートを読んで、「作品のレベルはともあれ、折々の夫の心情がわかって、なつかしい」と述べた1文があって、しみじみした。

 以下にこの歌集より、7首を引く。

病む母が指折り待ちいし白砂糖の配給かなし五日待てず逝く

ジャングルに生死分かちし戦友の名を書き持ちて夫は旅立つ

道の端に椰子の実かかえストローに冷えたる果汁いっ気に飲みぬ

紫陽花は寄りあい咲くと姉言いぬひとりは寂しと受話器のむこう

ホノルルの街を日本語すれちがいエネルギッシュに夜はふけゆく

さくら花南風に舞いちり舞いあがり六十六歳おとうと逝きぬ

大いなる夕陽にながき影ふたつ移ろいはやき世を歩みきて

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