宮西史子「秋時間」
香川県に在住の歌人、宮西史子さん(「コスモス」「桟橋」所属)が、第2歌集「秋時間」を送って下さった。
柊書房、2010年3月・刊。
宮西さんは、ブックセールスの会社に勤めて、売り上げトップを競ったという。
僕は、営業が苦手で、今の職に就く前に1度だけセールスの仕事をしたが、半年しか持たなかった。
営業が得意な人の心性がわからない、という事である。この歌集を読むと、少しわかる気もする。
宮西さんも、歌を詠むことで救われた分が大きかったと推測する。
以下に7首を引く。
傷付けずまた傷付かぬ会合の無くて言葉の地獄に棲めり
虚の中の真実、真(まこと)の中の嘘 心のなかに共に棲み分く
マンションのベランダに一つ開かれて黒き傘あり失語の如し
一年の総売上の覇を競ひ車駆りつつわれ発火しさう
駆けつこの負けじごころに走りたり大き集団の渦にゐし日は
この家の猫がのそりと膝に来てセールスのわが言葉弾まず
右に来てまたは背を押し前をゆきさみしがるなと言ふ影法師
この歌集の特徴に、自然な比喩がある。
「秋時間」、豊かな収穫の季節を楽しまれるように願う。
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