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2010年8月20日 (金)

桑原正紀「天意」

001  東京都に在住の歌人・桑原正紀氏が、第7歌集「天意」を送って下さった。

 2010年8月、短歌研究社・刊。

 桑原正紀(くわはら・まさき)氏は、「コスモス」選者、「棧橋」発行人。

 奥さんの病気と、歌集の発行について、「あとがき」に記されている。

 奥さんは依然として病院暮らしであり、体力は回復しつつあるものの、記憶障害は好転していない、との事である。

 仕事以外のほとんど全てを看護に費やす生活から、掉尾には「春のかぜ春のひかりのやはらかく妻をつつめり 癒えずとも…よし」と詠うまでの心境に至っている。

 以下に7首を引く。

「いくわよ」と下手投げにて投げ返すボール弱けれどストライクに来る

猫を見舞ひ妻を見舞ひて病院をハシゴする日々 月も痩せたり

ほんのすこし癖ある握りそのままに妻は三年ぶりの箸持つ

すこしづつ覚醒しつつある妻か今日くきやかに「おかえりっ」と言ふ

つぎつぎに片付け洗濯するわれを不安顔して猫が見上ぐる

「どうしたの?」とおどろく妻に花束のいはれを話す何度目ならむ

右手もて手すりをつかみ掛け声をかけて妻はも階段のぼる

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