水上芙季「静かの海」
東京都に在住の歌人、水上芙季さんが第1歌集、「静かの海」を送って下さった。
2010年9月、柊書房・刊。
彼女は歌誌、「コスモス」会員、「棧橋」同人。
この歌集には、彼女の19歳から20代最後までの作品から、490首を選び収める。
彼女が仕事と恋の他に、短歌に深く関わっている事は、良い事だと思う。短歌を読み詠む事は、人生を豊かにするだろう。
彼女は、短期大学から4年制大学に編入学し、東京大学教務課から文部科学省へ転職し(歌集の末では、そこも退職しているが)など、向上心の強いかたのようだから、歌人として将来が期待される。
以下に8首を引く。歌集の前のほうの作品が多い。
4時限目まどを見やれば中庭の木々がゆつくり色かへてゆく
女子五人集ひカメラ付ケータイの彼を見せ合ふ<雨夜の品定め>
六月の染井霊園しんしんと作家、詩人らの論争聞こゆ
アイスティーの氷はとうに溶けました来ない帰らう帰らない、来た!
平行に走る電車は回送であまたの死者を乗せて明るむ
強き雨降る杉林に立ち止まる ああまつすぐな雨、杉、わたし
ぼんやりと桜見てゐる君のこと見てゐるわれを桜は見てた
シャチ好きで涙もろくて達筆なこと知る前に恋に落ちてた
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