足立尚計「サルペドンの風斬る朝に」
10月3日(日曜日)の第5回苜蓿忌(このブログに記事あり)のおり、県内在住の歌人、足立尚計さん(「短歌人」所属)より、彼の第3歌集「サルペドンの風斬る朝に」を頂いた。
平成21年7月、六花書林・刊。
彼が編集する、県内を主とする同人歌誌「地楡(われもこう)」に出詠したのが、僕の短歌の発表の最初である。ある無茶な連作を出したところ、「これは載せられない」だけでなく、「普通に詠んだ作品があったら、送ってください」と返事を受けて、20首ばかりをワープロで打って出したのが初めであり、彼は僕の短歌の恩人である。
彼は大阪に生まれ、大学卒業後、福井で就職し、生活している。
福井女性史や橘曙覧などに関わる著作もある。
この歌集の「サルペドン」は、青筋揚羽蝶の学名より採った、という事である。この題名からも察せられるように、彼には繊細なところと、壮士ふうに勇んだところが同居している。
内容は、平成16年の福井豪雨災害を詠んだ「くずれ川」と、居住地を好む「越前を誉むる歌」の2大章より成る。
以下に7首を引く。
冷蔵庫・仏壇・テレビ水葬の棺のように足羽川行く
足羽川決壊したり。兎抱く娘背負って二階に上る
満月が瓦礫の山を照らすとき再生という言葉つぶやく
便乗しゴミを捨て行くならずもの態と湿らせ泥塗ると聞く
お前は白い花を好んだ雪が家を囲んだ朝さえカラーを活けた
いつまでも線路見ている俺の背を追い越して行く帰郷燕は
専門という語彙には口がない。無口なものよ学芸員も
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