有馬敲「終りのはじまり」
有馬敲(ありま・たかし)氏の3部作詩集「転生記」より、第1部の「終りのはじまり」を読みおえる。117編のソネット集である。
詩集「終りのはじまり」の発行が1973年で、1968年頃にさかんだった学生運動への共感と、その敗北後の挫折感を読み取れる作品がある。「ついに革命はできなかった」などの行がある。
具象と抽象の交錯するゾーンで書かれるので、読み流してしまいそうになる。
「32」を引く。
終りのはじまり 32
有馬敲
解きはなて武装されたことばを
すきなくよろわれた思考を
素っ裸にせよ
きざな眼鏡もはずして物にせまるのだ
ぎこちなくあごを張った
そののどぼとけを見よ
絶縁した裏がわからみごとにそむかれて
いたずらに年をかさねたな
すべてを脱いで生まれたときのかっこうになり
降りかかる水を浴びるのだ
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