岡井隆「夢と同じもの」
「岡井隆全歌集 Ⅳ」(思潮社、2006年・刊)より、今月2日の「神の仕事場」に続き、2番めの歌集、「夢と同じもの」を読みおえる。
原著は、1996年、短歌研究社・刊。
389首を収める。
月報にある、大辻隆弘・編「岡井隆全歌集解題」では、この歌集の作品について、「新展開は見られず、深い倦怠感が漂っている」と書かれる。
僕は、進展はないが展開はある、と思ってこの歌集を読んだ。
以下に8首を引く。
出て行ってネットプレイをするごとき愛のいくさもある 死螢よ
夏休み前ともなればうでたてのグリーンアスパラガスに近しも
かりがねや君の知らない会合で進退のややきはまる刹那
ゆつくりと螺旋階段を墜ちてゆく背中の匕首(ひしゅ)は<詭計(トリック)でせう>
荒すぎるオオデコロンて本当(ほんと)だよ耳もとへ来て「帰るわ」と言ふ
恩顧ある新聞社から帰り来て荒野の馬のやうだ 水呑む
一日(ひとひ)居て日毎ふかまる憂愁の(オレぢゃないてば)笹鳴日和
よいとまけとはなんですとたづね来し葉書のうへに滴るアロエ
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