西島麦南「人音」
角川書店「増補 現代俳句大系」第4巻(昭和56年・刊)より、7番めの句集、西島麦南(にしじま・ばくなん)「人音(じんおん)」を読みおえる。
原著は、昭和16年、甲鳥書林・刊。
長い「序にかへて」、500余句、後記を収める。
彼は「序にかへて」で「私は、芸術を衣食する資格を自らにゆるさない。」と書いたように、初期には「新しき村」への入植、それにも納得せず岩波書店に校正担当として入社、「校正日本一」と賞賛されるまでになった。
専門俳人でないせいか、きらびやかな句はまれだが、地味に吟じ続け、戦時下にあって時局吟は1句もない。
以下に5句を引く。
文弱のそしりに堪ふる卯月かな
惜しみなき千草の花の供養かな(温亭忌)
郁李(にはうめ)に春光あはき蝶のかげ
蒪生ふ沼のひかりに漕ぎにけり
菱の水めだか微塵に孵りけり
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